CONTENS

TOP

著作紹介

『サンタ服を着た女の子-ときめきクリスマス論』（白水社）

『失恋論』（角川書店）

『山田洋次の〈世界〉』
(ちくま新書501)

出版社　筑摩書房
発売日　2004.10
価格　￥ 777（￥ 740）
ISBN 　4480062017

ｂｋ１で詳しく見る

著作紹介

『ポップカルチャー
　　　　若者の世紀』

『特撮黙示録
　　　　1995－2001』

『宮崎駿の〈世界〉』

『宮崎駿の〈世界〉』が第24回サントリー学芸賞（社会風俗部門）を受賞しました。賞のお知らせ、選評、受賞のことばについては、Suntory News Release No.8300をご覧下さい。

『青い空、その下は廃虚－宮崎駿論』（『宮崎駿の〈世界〉』韓国版）　

『ある朝、セカイは死んでいた』
　

「[増補改訂版/文庫]怪獣使いと少年～ウルトラマンの作家たち』」
　

『日本風景論』
　

『地球はウルトラマンの星』
　

『お前がセカイを殺したいなら』
　

『ぼくの命を救ってくれなかったエヴァへ』
　

[単行本]『怪獣使いと少年～ウルトラマンの作家たち』

共著作紹介

解　説

Profile

Link

プロデュース本『セックスプレイヤー』好評発売中！

プロデュース本『セックスプレイヤー』（風吹あんな）

100晩分のセックスをプロデュースする人間であれ

──雑誌などに書いた彼女の文章が、なによりセックスに対して具体的な記述が多く、それゆえじめっとしておらず明るく楽しめ、役に立つものであると確信しました。そして彼女に連絡を取り、文章を単行本用に書き直してもらい、原稿をそろえました──切通理作

著者／風吹あんな　発行／インターメディア出版　定価：本体[1500円]+税

プロデュース本『セックスプレイヤー』好評発売中！

　私がプロデュース役を務めた、風吹あんなさんの処女出版『セックスプレイヤー』（インターメディア出版）が刊行中。
　本書は現在に至るまで約４０本のアダルトビデオ作品を監督し、主に「レズビアン物」と「ＳＭ物」という、男女のセックスが介在しない分野を得意としている女性・風吹あんなさんの本です。その映像センスからミュージシャンのプロモーションビデオも手がけています。

　彼女の作品、特に「レズビアン物」はリリースされると女性の売上が高く、ホームページ（http://www.j-ingram.com/top.html）は毎日1，000を越えるアクセス数を誇っています。

　もともとはＡＶ女優で、他人にSMや性行為をさせるだけではなく、自ら体当たりで仕事をしてきた人です。永沢光雄さんのドキュメント『ＡＶ女優』でも彼女の半生が紹介されています。

　しかし本書は、昨今よくあるＡＶ女優告白本のような「生きざま」系ではありません。
　私（切通）は新聞、雑誌などに書いた彼女の文章が、なによりセックスに対して具体的な記述が多く、それゆえじめっとしておらず明るく楽しめ、役に立つものであると確信しました。そして彼女に連絡を取り、文章を単行本用に書き直してもらい、原稿をそろえました。

　どれも短く、順番に読んでも深まり、途中だけ読んでも面白い本を目指しました。〈フリーセックス〉と叫ばれて数十年たってなお、自由にならない我々と「性」の関係を、抽象論にならず、あくまで具体的にコミュニケーションツールとして捉え直しています。
　おおらかで開放的な本ですが、犯罪的な行為を奨励したりすることなく「数」より「質」のセックスが語られます。
　「100晩分のセックスをプロデュースする人間であれ」という風吹さんとこの本で濃爆な対話をしてください。
　定価は本体1500円＋税。ISBN-901350-21-8

　『セックスプレイヤー』の構成は以下のようになっています。

１　オープニング／自己紹介編
本書のエッセンスがアクション映画のオープニング前映像のように連打されます。
２　愛撫編
３　野外セックス編
４　オナニー三昧編
５　ツインホール編
６　フェラチオ編
７　アナル道場編
８　ＳＭ編
９　レズビアン編
10　複数セックス編
11　「私の仕事はセックス」編
12　「私のセックス道」編
13　女と男の質問箱
ホームページのＦＡＱから想定される「よくある質問」に彼女が答えています。

　　風吹あんなさんは序文でこう書いています。
　「両性具有になりたかった」。
　　ヴァギナの疼きとペニスの怒張、子宮の収縮と射精感を同時に感じることが出来たら…、バイセクシャルである風吹氏のハイパーな世界は、ＳＦ・アニメ好きの想像力をも直撃し、具体性のディテールで満たしてくれるでしょう。
　想像するだけで身震いする世界へ。

『セックスプレイヤー』書評/紹介

「ダ・ヴィンチ」2001年10月号「絶対読んでトクする20冊」における永江朗さんの書評は、ＯＬ・水商売・ＡＶと、どの世界でもナンバーワンで、主婦も母親も経験してきた経歴に着目する。「セックスをするから自堕落になるのではなく、自堕落なセックスをするからいけないのです」という風吹さんの自信に満ちた言葉を思い出す記述である。
　＜100晩分のセックスをプロデュースする＞というこの本のコピーであり内容に、それはセックス以外のことにも通じていると書く永江氏。「100回分の食事をプロデュース、100冊分の読書をプロデュース。自分の快楽をデザインできないヤツは、人生を味わいつくすことができない」。ただ単にハードなセックス指南というだけではなく、その中から風吹さんの「品格」や清潔感を見出す書評だ。

　「週刊ポスト」2001年９/14号の書評欄「話題本のヘソとツボ」でも紹介。女性をイカせれば自分もイッテよしと考える男性に「それがいけないのです」と書く風吹さんに「それ、いけなかったの？　と思ったら反省して本書を読むべし」という紹介の仕方が楽しい。

「週刊朝日」2001年10月19日号では詩人の荒川洋治氏が連載枠の「ウオッチ性愛本」コーナーで紹介。書かれた事実の面白さだけではなく、言葉のプロである荒川氏が、風吹氏の文体それ自体を「乱れた、楽しい日本語にみたされた愛の世界である」と評価。

初プロデュースの弁跳躍台に乗る瞬間

※以下の原稿は「ROOF　TOP　08　2001.AUG」に掲載された『PLUS　ONE　一日店長Interview』を、ロフトプロジェクトの許諾を受けて採録したものです。

　批評家、フリーライターとして活動している切通理作さん。その著作物の大きな特徴に社会事件やテレビ・映画などの作品をひとつの「体験」として語るところにあるのではないだろうか。そんな彼が初のプロデュース本『セックスプレイヤー』を刊行する。その本のお話とともに最近の切通さんの心情をうかがった。（斉藤友里子）

■今思えばやせ我慢していた昔

　この何年かで自分に変化が生まれてきたと切通理作さんは言う。それが如実に現れているのは今年一月に発売した批評集のタイトルと表紙絵だ。６年前に発表した批評集のタイトルは『お前がセカイを殺したいなら』で表紙絵は孤独そうな中学生が人工的な空を眺めている背中。そして今年は『ある朝、セカイは死んでいた』に変わり、美しい少女が荒廃したビル群の中にたたずんでいる正面になった。

　それらについて彼は「未熟な男の背中を見せることで、いま思えばやせ我慢していたんですね。そろそろ自分の中の〈少女〉も解禁しようと。でも本当は、表紙を古屋兎丸さんに描いて戴くことになったんで、ならば少女をお願いしなきゃ損だというのが理由かも」と笑った。

■自己解禁した過程の一つ？

　そして今回、切通さんはＡＶ女優出身でＡＶ監督である風吹あんなさんの『セックスプレイヤー』を初プロデュースする。切通さんは言葉が薬にも毒にもなることを知っている慎重な人だし、非常にシャイな人だ。そんな彼がオープンに性を語る本に関わったというのは正直言ってびっくりした。もしかしてやせ我慢をやめた切通さんだからこそ、この本をプロデュースしたのだろうか。

「永沢光雄さんの『ＡＶ女優』は身の上話で泣かせる本でしたが、その中で風吹さんが『ネットで世界を支配する』と語っていたのに着目しました。以後毎日ネットで彼女の名前を追いかけ、本人のサイトが開かれてからはコンテンツの『セックス告白記』にハマってしまって、本にしたいとメールを出しました。会って話し合い、章立てや加筆の必要分を考えた。もともと僕はコンテンツをいじったり編集するのが大好きで、でも物書きとしての自分の『個性』を打ち出す方を優先させようと禁欲していたんです。その意味では、これもやせ我慢の解除かもしれない」

■プロデュースは公認の覗き行為ですよ

　作業に関して「中の文章は全然書いていませんよ」と言うが、切通さんの視点は時折『セックスプレイヤー』の中で見え隠れするように感じる。風吹さんが羞恥心を感じている描写がいくつか登場するが直感的にこれは切通さんが意識していた箇所かもしれないと思った。

「本の最初は、風吹さんが自覚なく危険な格好で外を歩いていて、後でそのことに気づいてオナるという文なんですが、僕がそれを最初に持ってきたら、風吹さんはドキッとしたと言ってました。風吹さんにとって『鳥肌が立つ』ってことは快感でもあるんですね。彼女は自分を『生身のダッチワイフ』と言ってるんですが、抱く側と抱かれる側の主体が交差するハイパーなところがカッコイイなあと。あと、必ずしもセックス至上主義じゃなくて、大のオナニストでもある。『挿入なんてオナニーの延長』なんて言われるとオナニー好きの中坊出身としては憧れちゃうじゃないですか！」

■文字でウルトラマンに？　シチュエイションのコスプレ

　前々から切通さんにはフェミニンなところがあるんじゃないかと思っていたので合点がいった。「男性でありながら、女性になりたい」という願望があるかもしれない。それはウルトラマンのように、宇宙人でありながら人間であったり人知を越えた力を持つ超越者に憧れるごとく･･････。

「なるほど。ウルトラマンも最初は性別考えられてなかったらしいしね。そういえば、『ティガ』の映画で女ウルトラマンのカミーラ演った梛野素子さんは、Vシネで風吹さんの吹替えやってたんですよお。もう興奮しちゃいます。ナギノさんカンバーック!！　いつか香港から帰ってきて欲しいです。強くて美しい女の人は好きかもですね。梛野さんの演じる破滅天使ゾクにガイアとアグルが弾き飛ばされるのにはシビレました。僕は現実にはSMプレイってしたことないんですが、実践者である風吹さんの文章によると、たとえば江戸時代の拷問とか見てそれを再現したいという欲望だったりする。ある種なぞるというかシチュエイションのコスプレですよね。すると僕は自分がコスプレするんじゃなくて、風吹さんみたいな人の本をプロデュースすることでそこに密かに自分の憧れを重ね合わせてるところがあったかもしれない。でも、あえて開き直れば、自分が萌えない本を他人様に読んでもらおうなんて間違ってると言いたい。どこか、自分の果たせない思いが跳躍台に乗って、こう、ハイジャックした飛行機が飛び立つような瞬間を求めてるんですよ。だからお客さん（読者）には、シートベルトをしっかり締めて読んでもらいたいですね。『どこに連れて行かれるんだ』みたいな」

■僕はそうやってしか生きられない

　切通さんの新しい著者であるちくま新書『宮崎駿の＜世界＞』で論じる対象となる宮崎駿氏は「作られた映像に浸るより、もっと五感すべてを使って物事を体験すべきだ」と言っていた。切通さんはそういった意見をどう思っているのだろう。

「宮崎さんはそう言って子ども達、というよりかは少女を包む世界でありたいと思っているんじゃないですか。『千と千尋の神隠し』なんて、そういうことがすごく正直に出てると思う。あれは少女を食べたいと願うカオナシというキャラクターが象徴的に出てくるけど、カオナシは物語をわかりやすくしているだけで、作品世界全体が少女を＜神隠し＞してしまった。そういう映画だと思います。なんのひねりもなく題名どおり。生きる力をもらえるとしたらそこですね。僕はアニメのナウシカをずっとノーパンだと思っていましたから。なんて画期的なアニメなんだろうって」

　そう言う切通さんの興奮は、架空の世界も「体験」の一つとして生きてしまう彼の面目躍如だった。