一度も若者だったことがないあなたへ この本では3年間かけて18歳〜24歳ぐらいまでの人と対話しました。大学生が多いのですが、彼らにとっての近過去である中学、高校時代の話も入ってきます。 フリッパーズ・ギター、ピチカート・ファイヴといった元祖渋谷系や、先ごろふたたび休刊が決まった「Olive」等の名前とともに、ついこの間の自分といまの自分を行ったり来たりしながら「変わらない自分、変わってしまった自分」をめくり返していく若者たち。 本に巻いた帯のフレーズとして、くるりの岸田繁さんから言葉をいただました。 「一度でいいから少女になりたいです。」 当初はもっとカタい若者論をイメージしていた僕も、この言葉で迷いを飛び越えることが出来ました。 僕がオビの裏に「一度も若者だったことがないあなたへ」と記したのは、それに応えたものです。 世の中にはいろんな若者がいます。もう自分の目的が定まっていて、そこに向って邁進している人たちもいるでしょう。ひたすら前に向って走る彼らを祝福し応援するという姿勢も必要かもしれない。 けれど、この本に出てくる若い人たちは、ゆるめというか、あまりきちっとしていません。将来も決まってないし、確固たる〈自分〉も確立していません。でもこの人たちの日常は面白そうです。『プロジェクトX』してなくても、前向きに見えます。 知らず知らずのうちに過去のスキルと照らし合わせてでしか価値や判断の基準を見出せなくなっている僕を含めた上の世代にとって、彼らがどう柔軟に対処していくのか、それを知ることは無意味ではないと思います。 21世紀は「未来がなくなった」時代だと言われます。過去も未来もない「いま」に、それぞれの人生がどう折り重なるのかを探して、この本を媒介に旅へと出てみませんか――。 そして本を閉じたとき、なにが見えたのかを聞かせてください。