全編をとおして読むと「ウルトラマンって好き? 強くなりたい? 生きたい? ナゼ?」という純な質問が聞こえてくる。ウルトラ好きには必読の本だが、心に光と闇を持っている人にもオススメの一冊。
(斉藤友里子・LOFT PLUS ONEプロデューサー/『ROOF TOP』2000年6月号)
今後数十年間、新三部作の傍らで読み継がれてゆくことを約束された、幸福な労作である。
(加藤秀一・明治学院大学助教授/『東京新聞』2000年5月21日)
月光仮面世代まではヒーローを自身の子ども時代 とともにノスタルジーの世界に置き去りにしたのに対し、ウルトラの子たちは、ヒーローと子ども時代を抱えたまま大人になったからだ。
そのこと自体に是非はない。が、抱えた限り、それを伝えようとする意志は、何物にも替えがたく美しくある。同じくウルトラの子である切通はそこをうまく引き出した。
(ひこ・田中/『週刊読書人』2000年5月26日)
かつてウルトラマンは「光の国」から来た神のごとき存在だった。「平成ウルトラ」は根本設定が違う。人間だれもが「光」を持っている。だからみんな「ウルトラマン」になれる。それが本書の題名にもある「平成ウルトラ」の骨子だ。この変革の構図は、偉大な作品を見上げていた60-70年代の少年が大人になり、新ウルトラをつくり、観たとき「では自分の光とはなんなのだ?」と内面からわきあがった疑問から生まれたものなのだろう。
壮大な回帰と進化の構図が実に2000年らしい。二冊(『怪獣使いと少年』と『地球はウルトラマンの星』)の併読を強く推奨する。 (氷川竜介・フリーライター/『オンラインブックショップbk1』2000.07.18)
この分量は<ウルトラマンとは何か>というテーマを著者と共に体感するには必要だったのだろう。ライブ感にあふれた優れた読み物である。
(佐藤利明・娯楽映画研究/『キネマ旬報』2000年7月上旬号)
「平成」三部作において「…になること」が「光」と「人」、個体と複数性、始源性と抜本的<他者>性といったものの間を揺れ続けることでもあったように、本書に召喚されたおびただしい固有名詞は、共同製作の現場と個の間で、単一ではない、それぞれのウルトラマン像を輝かせており、まさに生成変化する(しつつある)ウルトラマン像が浮き彫りにされてゆく。そして、『怪獣使いと少年』で「昭和ウルトラマン」と「僕」の間に揺曳する異邦人の孤独を織り合わせた切通は、「僕」であり無数の<他者>でもある肉声を敷延することによって、<他者>を前にして閉塞する「オウム」−『エヴァンゲリオン』的「内面」を超えて、この世界の諸相そのもの「になること」という、新たな祈願を本書のうちにそっと挟み込んでいるのだ。
(生野毅・文芸,映像評論/『図書新聞』2000年7月15日) |