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『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』 |
処女作、さらに加筆して待望の文庫化!
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切通理作著/
宝島社文庫667/全397頁(ハードカバー版より100頁近く加筆)/
解説・宮崎哲弥/本体667円/ISBN4-7966-1838-4
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ウルトラマンシリーズの4人の作家が怪獣に託した<時の断層>を掘り起こす地道な作業を通して、少年が見たものは……
「ウルトラマンと怪獣たちが織りなすドラマ―少年期から青春時代をとおして、著者がそこに見、感じ取ったものとは? 怪獣に夢中になり、時に同化していた少年は、使命を受けたかのように、ドラマを振り返り、その生みの親たる作家たちの軌跡を丹念にトレースする。処女作待望の文庫化なる!」
5月25日、朝日新聞14面の書籍広告より
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今回、文庫化される同書が、7年前に最初に発刊された際の書評から以下抜粋します。
●川本三郎
とかく現実逃避が批判される「おたく」世代のひとりとして、自分の「おたく」 性を大事にしながらも、同時に、時代や社会と対峙しようとする真摯な「自分探し」の書である。
だからずっと上の世代の人間が読んでも感動を共有しうる。
(公明新聞)
●黒川創
著者は、ここで四人の作家の四者四様のドラマ作りとその後の道筋を共感的 にたどることで、ぜい弱な<世代論>とは異なるコースを取っている。
(朝日新聞)
●大月隆寛
現実を生き難い者にとっての「歴史」の回復。「志」という時代がかったもの言いも、こういう仕事に寄り添うとぐっと渋く響く。
(東京新聞)
●木股和史
ウルトラ・シリーズを通して、アイデンティティーをめぐる戦後日本の <空虚>の意識がどのように表現されたかを描き出したすぐれたマス・カルチャー批評となっている。
(読書人)
●山崎浩一
ウルトラマン体験というものが、世代的な体験である以上に送り手と受け手の個人的体験の集積であることを初めて明かした本でもある。これに限らず、優れた本とはそういうものだ。
(日本経済新聞)
●坂東齢人(馳星周)
ウルトラマン・シリーズのメイン・シナリオライターたちの生き方、思想をとおして現代日本の病巣を浮かび上がらせるというとてつもない力技なのである。
(本の雑誌)
●赤田祐一
ステレオのアンプで言うなら、ヴォリュームの目盛りが「2」の位置にあるのだけど、言っていることははっきり伝わるという種類の文章であるような気持がします。
◆宮崎哲弥氏による文庫版のための解説より
八〇年代以降の批評家たちは、「あるがままの内面」に懐疑を差し向け、それを宙吊りにした上で、いかにして主体とは別様の批評的視座を仮構でき得るかを模索していた。
ところが彼の批評は、自分の内面と作り手の内面とが作品を媒介として照らし合わされることが常であった。
内面の問題をまるでなきがごとくに扱い、内面に由来するルサンチマンを悪として斥けた八〇年代的時代状況に対する強烈な異議とすらいえるかも知れない。
「この私」は本当に「この世」と繋がってある存在なのか。「この世」に祝福された者なのか。
このような、いわば実存的な問い立ての家郷として切通が見出したのが、「ウルトラマン・シリーズ」の初期の諸作品だったのである。
境界にある者、傍観する者、外つ国の者、浮遊者として描き出された四人の脚本家は、それぞれ「オタク」以降の世代の原質ともいうべきものを備えている。
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