目 次
@ある朝、学校で
●ホワイト・アルバム――県立所沢高校生との対話
「日の丸」?「君が代」? それって何? すべてメディアで語られることだけが真実なのか。
CONTENTS:
公立高校の学園ドラマ/『生徒人権手帳』の怪/
そして取材へ/自分の側から考える/淋しさのありか
●少年少女の国の「囚人」
1945年8月15日敗戦。この座標軸「ゼロ」の時点から、少年はすべて「匿名」という名の風景に溶け出してしまったのだ。
CONTENTS:
共感/変成/風景
●戸塚ヨットスクールと「生きる実感」
ゲンコツには「幸せ」があるんです。今の子は殴らなくても分かって頭がいい。それが不幸です。
CONTENTS:
「自殺」の次は「殺人」/脳幹トレーニングと仏教/
オウムの信者はホントに幸福なんよ/死のイニシエーション/
思い知れ、お前だけが頼りや/「福祉と宗教は甘えが生み出す」/
一般社会そのものが無気力児童化/時代を先取りした戸塚宏の直感
●「被爆」少年たちの終わりなき戦い〜
『二十四時間の情事』『はだしのゲン』『真田風雲録』
『共犯幻想』『ザ・ムーン』『漂流教室』『少年の町ZF』
廃墟の「広島」で少年たちはなにを見たのか? われわれは彼らの姿を背負って戦後を生きてきた。
CONTENTS:
完璧な瞬間/「何回も死ぬのが好きじゃのう」/
マンガと自叙伝の違い/ テンデかっこよく死にてえな/
一人はみんなのもの/「戦う自分」を選ぶということ/
私はもう汚れている/オブセッション/存在と時間
●「理想の学校」を求めて
「長い人生、一年や二年の遅れがなんだ!」 もう一度問い直したい、学校・この不思議な場所。
CONTENTS:
「真の自由人」たれ/「学校に行けなくしてやる」/
落ちこぼれ狂時代/山の上の学園紛争/
地図にない国/学校、あの不思議な場所
Aある朝、彼女は
●かくれんぼう気分――わが友・宮崎勤
お元気ですか? こっちの世界は毎日殺人が続いています。でも、君が悪いんじゃないからね。この責任は、きっと僕たち。
CONTENTS:
「M君」の出現/少女たちの向こうに/
同世代的共感/宮崎という少年/
世界を相手どることをやめる/「行きつく果て」/
リアルな「適応者」/コレクションの中身/
甘い場所/家族崩壊/性的犯罪
●恋愛なんかやめておけ
インテリ映画監督の自殺は何を後世に残したのか? それは「モテる―モテない」の考え方こそ、死に至る病だということだ!
CONTENTS:
一切の価値を信じない/図書室の恋愛論/
死に至る病/「幻想」の死
●夏への扉〜
アニメーションに記された<刻>、あるいは庵野秀明論
『宇宙戦艦ヤマト』で毎回の最後に「あと×日」と出たように、庵野秀明監督の『式日』『ラブ&ポップ』でも時間を刻むテロップがおびただしく挿入される。それは時間を前に進めていく根拠を見失った我々の姿を映し出しているのだろうか。「偽りの再生」はいつ訪れるのか。
CONTENTS:
セーラー戦士たちの「戦い」/『新世紀エヴァンゲリオン』の戦い/
無時間を生きるということ/終わりのない夏/
『トップをねらえ!』の青空/対象喪失/
『宇宙戦艦ヤマト』と少女の日常/表面張力/
生の現実と出会わない/視線の多数性/
あのすばらしい愛をもう一度/ 式日
●本当の話をしたいのです――柳美里論
「家」って何? わたしはどこにいればいいの? ここにいていいためには、何を失っていることを語ればいいの?
CONTENTS:
崩落体験としての「家」/「空白の人」の不在証明/
吃音者の「分身」/ 閉域という磁場/
折り合いをつける/被写体
●冥界をめぐる対話―柳美里(二七歳)と
静物画/葬儀という祝祭/
夕暮れ/いかに棒立ちになるか/父親/
「あなたは悪い人です」/書けなくなる時
●現実が私を許さない―柳美里(三十歳)と
大人になることが出来ずに死んだ子どもは新たな生命に「チェンジリング」して生き直すという認識は、死者でもなく生者でもなく、これから生まれて来る者にこそ希望を見出す。しかし柳美里の中にそんなお伽話を棲まわせる余地はない。一歩置いて書くことすら困難な「現在」との格闘が『命』だったのだから。
CONTENTS:
現実が私を許さない/赤い字の名刺/
「小説から取り残されてしまった」/「命の締め切り」/
劇場でこそ<人
間>を見たい/人と人はどこまで関われるか/
人生はリセット出来ない
●異形の君へ
もうすでに、他者も自己もない。あるのは「仮面」の意識だけ。恐怖も自己陶酔も超越した、究極のコミュニケーションとは?
CONTENTS:
キカイダー/スティグマ/
「こわい顔」とは何か/仮面/
「醜形恐怖の人お断り」/剥奪された「匿名性」/
「解決策は書いてない」/アザという地図
Bある朝、戦場で
●小林よしのり「与党精神」の果てに―『戦争論』を読む
「ゴーマンかましてよかですか?」 ええ、どうぞご自由に。象徴性カリスマを弄ぶ「良き観客」との良き関係とは? 朝日新聞の「私たちが選んだ3点」で鶴見俊輔氏より評価された論文がここに収録!
CONTENTS:
血沸き肉躍る「物語」?/天皇制呪力の希薄化/
死民こそ市民?/「天皇」の合理化/
「死体教信者」になるな!/ 「与党精神」の呪縛/
神を怖れぬ野望/すべては「よしりん」の陰画/
劇場空間を拡大せよ!/「個の復権」からの変節/
平和では物語にならん
●ガンダムという戦場――富野由悠季と二〇年目の「ニュータイプ」論
「古き良きアニメファン」から黙殺された富野由悠季の『∀ガンダム』。だが、そこには21世紀を睨んだ戦争論が含まれていた。
CONTENTS:
認めたくないものだな、若さゆえの・・・・・・/
宇宙と宗教が合体した世界/戦場で・・・/
永遠にアムロ /いつまでも来ない「ニュータイプ時代」/
∀からの再出発/∀の戦争論
●「ポア」の青空
オウム事件。彼らはどこへ越境しようとしたのか。さまざまな論者のかまびすしい論争。だがエンタテイメント小説の持つ批評性こそ、私にとって一番の脅威である。我々は自分の感覚というものをどこまで知っているのか。ここでは、他人と同じ現実を生きているのに誰とも交換不可能な世界が繰り広げられる。井上夢人作品に見える同時代的感触を追体験する。
CONTENTS:
「ポア」の読み替え/「一人称」の内実/
灼けつくような一体感/「青空」への憧憬/
原存在を生きる/自由のイメージ/
サリンと「青空」/酸素は液体になると青い
●戦争しか知らない子どもたち―作家・見沢知廉の快楽
見沢知廉の「調律の帝国」は神社にテロを仕掛けていた左翼青年が、獄中で転向していく物語だ。 密室で我を失い、赤ん坊になっていく主人公の世界には神道の精神が宿っている。この部分は、見沢知廉論のクライマックスになる。
そして見沢氏との対話――膨大に書き足された難解な文字はそれ自体、ひとつのエッセイのようだ。本書収録用直し原稿の受け取りは奇しくも12月8日。アメリカとの開戦の日であるとともに、出所六年目の記念日だった。出所後、間隔を置いて行われた見沢知廉氏の取材と批評、その集大成が本稿だ。
CONTENTS:
戦争しか知らない子どもたち/「オレの言葉は暴力だ」/
「オレだけがもう美だ」/封殺された『天皇ごっこ』論/
殺人者の心理/地平線の鉄塔/
スパイ粛清事件/ミヤケンはオレの合わせ鏡/
ウイルスと強迫観念/オレは選ばれた男/
調律の帝国
●「行為の白紙性」は必要か?―平和憲法の「選び直し」について
加藤典洋の『敗戦後論』、妹尾河童の『少年H』は、どんどん薄らいでいく「戦後」の記憶と思想を、表裏で示したのではなかったのか。「でもオレはここにいる」。
CONTENTS:
一段ハイブロウな考え?/ 追悼の順序は既に終わっている/
主体的な「一貫性」なんかない/ 「少年H」とうわの空
●ある朝、セカイは死んでいた
『ザ・ワールド・イズ・マイン』。「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いかけがこの漫画から始まっているということを意外と誰も問題にしない。だが「酒鬼薔薇」以降の三年間は、この作品で全て描かれてしまっていたのではないか。『バトル・ロワイアル』の映画版を作った深作欣二父子は『ザ・ワールド・イズ・マイン』を読み、快楽殺人者の行動原理にした。「あれは現状認識である」という鋭い言葉は、未明の領域から私たちを解き放つのか――。
CONTENTS:
なぜ人を殺してはいけないのか/ザ・ワールド・イズ・マイン/
殺人者と「引きこもり」/ドラゴンヘッド/
バトル・ロワイアル
書評関係「LEE」誌の2001年5月号でおおくにあきこさんという方に『今月のベスト本』として書評して頂いています。本の中にある様々な場所での対話をひとつひとつ受け止め、「結論を急がず」「じっくり考える」機会として捉えて下さっています。
鞄本ジャーナル出版から出ている雑誌「DONDON」の2001年5月号(NO.311)で永江朗さんがインタビューしてくださってます。100頁に掲載。
永江さんのHPで取材のことを書いてくださっています。
高原英理さんにはあまり評判の良くなかった小林よしのり『戦争論』についての文章が一番面白かったと言って頂き、またそのポイントも掴んで下さっているのでうれしく思いました。
毎日新聞に2001年1月28日、カバーデザインが載り、紹介されました。Web上でも見れます。
本の話(文藝春秋)2001年3月号に中森明夫氏の書評『切通理作の場所』掲載! 「人間否定をくぐり抜けた後の『言葉』への柔らかい変化の響きがある。『世界は既に死んでいた。だが『私』はまだ死んでいない』というこの本の結語を、私は“文筆者”としての切通理作自身の存在証明として受け取った」と。
「週刊ポスト」2001年3/23号で枡野浩一さんが書評(178頁『味わい本 発見!』コーナー)。「社会現象を語るとき、著者はその社会現象をじかには語らない。その社会現象を反映するかのようにつくられた『創作物』を読み解くことによって、社会現象の本質に迫ろうとするのだ」と本書の姿勢を射抜く。
週刊読書人(2001年3月2日/第2376号)に高原英理氏の書評が掲載。事物・行為に沿って認識していく実践としての批評行為の記録として読む。同じ高原氏による書評『批評のプロレタリア』が掲載されたのは『文学界』2000年4月号。
共同通信と時事通信の配信により、全国の地元紙で書評が掲載。共同通信では詩人・福間健二氏が「現在の孤立する心への、独特のシンパシーの回路をもって、他者のいる場所を了解しようとする」と、時事通信では野田正彰氏が「漂う世代の漂う評論集」と書いてくださりました。
また朝日新聞2月25日文化面で紹介。
ロフト情報誌「ROOF TOP」4月号に切通の文と、ロフトの「席亭」こと平野悠氏に書いて頂いた『ある朝〜』書評が掲載。子どもの頃から学歴優秀な者の文章にはないタッチに「どこかほのぼのしてしまう」と指摘。
「映画秘宝」22号に書評が載りました。ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』のラストに言及したのはこの書評が唯一。さすが『ゾンビ』には人生のすべてがある!と書いた「映画秘宝」の書評ですね。「悪魔を憐れむ歌」は私も好きです。
オンライン書店「es! BOOKS」で読者投稿の推薦文が載っています。
【化け猫】さん、ありがとう! http://www.eshopping.ne.jp/bks.svlから「ある朝、セカイは死んでいた」で検索して下さい。
三晃堂本店のHPでも書評されています。「近代特有の『なぜ、なぜ』を特権的に語る仕種も必要ないし、無理に『自己肥大化』しなくても『自己と他者』の『距離』を測りながら動ける『普通』を大切にできるところが好ましい」と。
編集工学研究所「いと・へん」のHPで「今週の三冊」に選ばれています。「ジャンパーを着たままの言葉で誰もが眉をしかめた社会事件を聞きこんでいく」と書かれています。http://www.eel.co.jp/03_wear/01_weekly3/010403.html下さい。
「ロッキング・オン」誌でも活躍しているSATOSHIさんのサイト「エルレンド」には『「青空」を見上げ過ぎて―- 批評家・切通理作の示すセカイの手触り―』と、それを大幅改稿した 『「青空」と「学校」の迷宮の中で―- トム・ヨークと切通理作―-』が掲載されています。「たとえ『僕』が生まれてこなかったとしてもそれでもまだここにあり続ける世界のかすかな感触、手触り」を感じ取っています。
書籍検索サイト 「BRI」 の2001年度ランキング、3月分でベスト10冊の第4位に入っています。
『映画芸術』のNO.395に作家・前川麻子さんの書評が掲載されました。前川さんは既に出ていた書評もいくつか読んでいて、「誠実な批評だ」というような文脈に「こいつそんなに〈イイ奴〉かあ?」という鋭いツッコミが見られます。
「出来事や人や思想を、好きな形に切り取っては貼り合わせて、夏休みの宿題をせっせとこさえているような、怪獣好きの少年である」という記述に我ながら失笑です。
他に「週刊現代」「NEW TYPE」「鳩よ!」にもレビューが載りました。
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