山のスポーツビジネス

今年のハセツネ(日本山岳耐久レース)のエントリー、月曜10時にネットの「ランネット」で開始後、わずか2時間で終了してしまったそうです。
大人気ですね。
アクセスが集中してサーバに負荷がかかって、ページが開けないなどの問題もあったようです。

hasetsune

そうした問題に対して、運営側は沈黙を守っています。いや、問題とは認識していないのかもしれない。

エントリーに関する不公平感は高まるでしょうね。
遠方の人は、ハセツネには参加しにくいでしょう。ポイント取得に不利です。
ランネットを利用しない人はそもそも無理ですし。
朝10時のエントリー開始で12時で定員になってしまうのなら、勤務中の方はエントリーできません。

運営側にとっては、それも一つの参加の条件なのだから、問題としては認識されてないのでしょう。
それが彼らが設定した一つの「自然条件」である、と。その厳しい自然の試練をくぐり抜けてスタート地点に立て、と。
あるいは、問題だと思っていたとしても、人気があるのだし、これからますます人気が高まるはず、
だからこうした問題は些細なことだし、放置していても大丈夫、と思っているのかもしれません。

さて、ちょっと脱線。

今の山小屋って、麓の旅館と同じぐらい、よいサービスをしていますよね。

山に来る人が減って、それなりにお金もってる中高年が多くなって、山小屋は様変わりしました。
サービス満点、レストランみたいな食事でとてもおいしい。
麓の旅館と変わりありません。
そうでないと、リピーターで来てくれないし、悪評判がたつとあっという間に広まってしまう、そうなったら経営が成り立たない。

昔むかしの、山小屋の食事って、おいしくなかったですよね。
人気のある山の山小屋でもそうでした。
「サービス悪いなー。ご飯もまずいし・・・でも、山の中だし、混雑してるし、しょうがないよね。みんな、たいへんなんだもん」
山には人気があるので、どんどん人は登ってくる。
小屋はいっぱい。
そうしたら「いきなり素泊まり料金値上げです」と言われて「払えない人、予約のない人は帰ってください」なんて言われたら、そりゃ不公平感が高まりますよね。

「あれは山じゃないよな、もう一度登ったし、もう二度と行かなくていいよね」

なんて話、いっぱいあったような気がします。
いつしか登山人口が減り、山と山小屋のファンも減り、そして、山は自然の美しさを取り戻し……?

ハセツネも静かな大会になるんでしょうか。
いや、そうならないかもしれませんね。

「山小屋に泊まる? 岩場の途中に小屋なんてねーから。ツェルトと半シュラフだろ? 登りたかったらそれなりの準備をしろ、金と時間と労力を惜しむな」

 トヨタは金融危機と大不況の影響もあって、F1そのものから撤退すると発表しましたが、その前の段階として、「富士スピードウェイ」で開催した「F1日本グランプリ(GP)」で、雨のなか観客が悲惨な目に遭ってしまい、観客からクレームの嵐を受けたというのが撤退の最初のトリガーだったのではないかと思います。

 モータースポーツとハセツネを比較するのがおかしい、厳しい鍛錬の末に激しい競争を繰り広げるマゾヒストの大会がハセツネだ、雨で悲惨な目に遭うのだって最初から承知している参加者なんだ、スポーツ観戦の観客じゃないでしょ、と言われればそうかもしれませんが(笑)、お金をとる以上、対価としてのサービスを享受できるイベントだと思う人も多いでしょう(そうでない人もいるでしょうけど、高年齢になってくればなるほど、そういう視点でものごとを見るようになるわけです)。

 そもそも参加者がサービスを受ける側としてサービスして下さいと考えるほうが間違っている、のかもしれませんが、それを保留しておいての話になります。
 サービスを期待できる大会かどうか、それはどうやって判断すればいいんでしょう。
 ハセツネにエントリー料金に見合うサービスを期待できるかどうかは、その収支がわからないとなんともいえないでしょう。
 これまでボランティアは手弁当、関係者は自分の財布から持ち出しで、最近になってようやく黒字の収支になってきたなら、まぁ、少しぐらいいいじゃないの、という気もしますが……。

 しかし、この不況下で、理由をアナウンスすることもなく参加費を上げてしまったのは、マイナスであることは間違いないでしょう。

 大会をブランド化することで、逆に、大会の維持が難しくなる可能性もあります。

 もともと参加人口の少ない世界ですから、エリートランナーだけをもてはやす大会、企業が道具を売り込むためだけの大会になれば、次第に注目されなくなる、という危惧もあります。

人気が高まる、注目される

ビジネスのプラットフォームになって企業が寄ってくる

ブランド化する

抜き差しならない関係組織、関係者が増えていく
要求・要望が増えていく、見返りを期待される

費用がかかる
TO DO / MUST DO が増える

料金を上げざるを得なくなる
要求されている条件に見合った参加希望者を優先的に参加させなければならなくなる

不公平感が増す

(無視:現在はこのあたり?)

この後、


それでも人気は高まって、さらに注目され、大きな大会に成長していく

のか、


これまで熱心に支えてきたサイレントなファンやボランティアが離れていき、大会参加者が減り始め、肥大化した組織を維持することができなくなり、開催できなくなる

のかは、日本の不況がどこまで続くのか、ランニングブームがどこまで続くか、によるでしょうね。

あるいは、


収支を含めた情報公開を積極的に進め、参加者の意見も取り入れてエントリーに関してはより公平になるようにし、より広汎な支持を獲得、トレイルランと山を愛するファンに支えられ、都市近郊の自然を守り育む継続的なエコロジー活動を推進・啓蒙する社会的意義の高い大会へと成長を遂げる……

または


超高速エリートランナーが競り合う、トレイルランの最高峰として、メディアと巨大資本を巻き込んで、さらに大ブームが続き、山を舞台にしたスポーツビジネスとして脚光を浴びる

……さて、どうなりますことやら。

ちなみに、山関係のビジネスは再び冷え込むでしょう。
インプレスグループの業績を見ればわかります。

干しておきますかね、ぺたぺたの羽毛シュラフ。

山のスポーツビジネス」への2件のフィードバック

  1. ゴントさん

    いずれハセツネ出場者の年齢層も歳を重ねて、出場不可になり参加者が減るのでは

  2. gont 投稿作成者

    日本の年齢分布を考えれば、
    厳しいレースとなれば高年齢層は参加できず自然とリタイア、
    全体の参加者は減っていく、と・・・それはあるかもしれませんね。

    ランニングのブームはまだまだ続くと思うんですが、
    トレイルランは一過性のような気もします。

    ・レースとなれば思ったよりもずっと負荷が高い
    ・故障も多くなる
    ・遭難の危険もある
    ・マナーの悪いトレイルランナーに対しての登山者・ハイカーからのクレーム
    ・自然(登山道)破壊
    ・不況で所得と余暇時間がが減ってしまう

    ただ、レースではない楽しい山のマラニックは地味に定着するかもしれませんね。

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