久しぶりにワクワクする科学ニュース。
自分なりに新聞記事をまとめてみた。
北米には13年または17年ごとに大量発生するセミがいる。13と17が素数なので「素数ゼミ」と呼ばれている。
なぜ、13年と17年ごとに大量発生するのか、謎のままだった。
仮説としては、「交雑の回数がもっとも少ない周期のセミのみが生き残った」ということ。
セミにとっての生存戦略は「大量発生」だという(下記のワイアードビジョン記事より)。
交雑が起こると、そのセミの種類は発生周期に乱れが生じて、発生しても少数の集団となって繁殖力が下がり、さらに捕食されやすくなり、次の発生個体数が少なくなる可能性がある。
一方、交雑が起こらずに発生を繰り返せば個体数は増えていく。
13と17の素数なら、交雑は221年に1回しか起こらないので有利だ。
しかし、単純なモデル(世代交代を繰り返すだけのモデル)では、こうした結果は現れなかった。
現実と仮説モデルの違いは、違うパラメータが介在しているからだろう。
その答えとなる仮説が導き出された。
静岡大の吉村仁教授(進化理論、進化生物学)と兵庫県立大大学院生 Yumi Tanakaさん、米コネチカット大Assistant ProfessorのJohn Cooley の共同研究チームが、シミュレーション・モデル実験で導き出した。
チームが注目したのは、米国の学者が提唱した「アリー効果」。
ビオトープ管理士の基礎知識12「アリー効果」@一年一資格〜日々是勉強〜
アリー効果(alle effect)とは、個体が集合することによって適応度が増加する効果のことです。
ですから、開発による生息地の縮小等で、個体密度が低くなると、アリー効果が消失し、その個体群は絶滅の危険性が高まります。
個体密度が低くなると、配偶相手に出会うことが困難になったり、天敵に対する集団的な防御が機能しなくなったりするなどの現象が生じるからです。アリー効果(環境基礎用語)@動植物調査の道@イソシギさん
個体数や個体密度が低いことで繁殖力や生存率が低下する現象。
例えば小さい個体群では、交配可能な相手をさがすのが困難になったり、 花が密生して咲かないことで花粉を運んでもらう昆虫を十分に誘引できない。
(動物においては、「群れる」ことで得られるメリット(外敵から襲われにくい、 共同での子育て、外敵を交代で監視する等)が失われることも、これにあたります)
個体数、個体密度が低下すると生存率が下がる、というパラメータを入れたシミュレーション・モデルで、素数以外の発生周期の種類は絶滅し、素数の種類のみが生き残ることが確認できたという。
ニュースのソース
- 日経新聞(09.05.25夕刊)の要約された紹介記事、「アリー効果による素数ゼミの優位性を突き止める——吉村仁さん@「こころは超臨界」の資料編」)
- 朝日新聞「周期の訳にアリー効果 静岡大教授らモデル実験で解明」(09.05.29朝刊)
- 13年か17年で大発生するセミ:謎を日本の研究者らが分析@ WIRED VISION ワイヤードビジョン(2009年5月25日)
北米(あるいは地球全体)で起こった「アリー効果」をもたらすイベントは氷河期で、厳しい気候のなかでの生存戦略として、最適な素数年(13と17のみ)の発生周期を獲得したという仮説だ(上記、朝日新聞より)。
ただし、これですべてが解決したのではないようで、
・交雑→違う発生周期のセミが本当に生まれてくるのか実証されていない
・発生時期の違うセミの分布地域は重なっておらず交雑が起こらないのではないか
(上記ワイアードビジョン記事参照)
といった疑問もあるそうな。
まとめ、終わり。
んで、文系な自分がSF的に妄想するにはですよ、こうした「厳しい環境=氷河期のサバイバル」なんていうと、人間の生存戦略、アイデアや商品の生存戦略、長く残っていくものはいったいなんだろう、なんてことを考えるわけです。
争い事(捕食行為)を避けつつ、それぞれがそれぞれに遠慮しながら(同じ時期に大発生しないようにする)生き延びていくほうが、結果として、双方が生き延びる確率が高い、それはもちろん、イケイケドンドンな繁殖しやすい環境下ではなくて、厳しい気候、砂漠や氷河のある気候の時代には、ということです。そういう時代は、戦って戦って勝ち残っていくという戦い方式では少数となり、絶滅しやすい、と。と、強引な解釈と結論付けをしてみましたが、どこかでこの話、聞いたことがあるなーと思いました。なんだっけ、ゲーム理論だとか、囚人のジンマシンとか、そう言う話で。
どうせならもっと大きく考えてみよう、ということで、100年に1度の経済危機(による大盤振る舞いの予算と未来への大借金)、地球温暖化という危機(ならびにエコエコ詐欺?)が迫っているわけですが、こういう環境下だと、人類の中にある国家間対立、民族対立などをしていると絶滅へ向かってしまいますよね。
上記のセミの話から連想すると、人によっては、自民族純潔主義を徹底しろとか(そういう言葉は存在しないだろうけど、混血しないというエスノセントリズム)、他国民や他民族と結婚するな、異分子を排除しろ、黒船を追い払えとか、そのほうが生存に有利だとか思うような人もいるかもしれませんが、そういう戦略では無理なんではないかな、と。
重要なのは、より多くの人間との出会い(生物学的には交配ですが、知恵の交配ということでもある)の機会を増やすこと、同時に、敵対しそうな人間と鉢合わせする機会(笑)を減らす、ということです。そして、鉢合わせしてもスルーできる力をもつこと。物理的に戦争やったり、対立のよる分断がもっとも人類にとってマイナスなわけです。わざわざ大きくケンカすんな、それでビジネスすんな、と。20世紀は戦争の世紀でしたし、今もその延長にあると思われていますが、どうやら環境のほうが先に変わってしまい、人類が変化に追いついていない、そんなふうに思ったりします。
では、どうやって、出会いつつも、対立を防ぎ、スルーするか。
思いついたのは、「固有の周期性を同期して獲得する」ということではないか、と。淘汰圧の考え方で考えると、ダメになった奴は絶滅して最適化した奴が生き残った、という結果論でしかないわけですが、これを意図的に獲得する、進化を意図的に促進させる、としたらですよ、別種類の存在が、どこかで同期・調整しなければいけないんです。素数が、素数でありながら、同期しなければいけない。そっちがその素数なら、こっちはこの素数でいくぜ、という、調整とコミュニケーションが働かなければいけない。
それができるのは、人類だけだよなー、と。
セミの場合の生存戦略の軸は、大量発生による大量交配+他の種類とバッティングしない周期性の獲得、ということのようですが、祭りのどんちゃん騒ぎ(?)と譲り合いの精神のミックスと考えれば、日本人のもっている心性(非科学的な言葉ですが)に近いものがあります(笑)。
日本人はセミなどの虫の音に風情を感じるんですが、外国人にはノイズになるそうですから(これは伝聞であって、ほんとにそうかはわかりません)、日本人とセミは相性がいいのかもしれません。別に日本人だけが特別・特殊なんだ、なんて考えてはいませんが……
それじゃ、日本人とセミについて、もっと考えてみよう、なんて思って検索したら、おもしろそうなページを見つけました。↓
時間ないんで、後で読みますけど、このあたりはまだまだ楽しい科学(とそれに附随するブンガク的妄想)の宝庫ですね。