「ぼくらのほうから駆けつけてやる! ぼくらこそは救援隊だ!」(『人間の土地』サン=テグジュペリ)を思い出した。
自分たちが遭難してるってのに、なんでオレらが救助隊なんだって?
そうしたいからだ! ははは。その場にいたならば、他に選択肢なんてのはないんだよ。
春の穂高岳沢、夜。隣のテントが騒がしい。ガチャの音がする。アイゼンを履いているようだ。おいおい、これから行くのかよ?
奥穂南稜の中間あたりでヘッドランプがいくつか揺らめいているのが見えた。
アイゼンを履いて外へ出る。なぜかって? そうしたいからさ。