2010年8月15日、沢を二つ繋いで、トレランで走り降りるという、古くて新しい感じのカモシカ山行でした。
当初の計画では「さわらびの湯」までトレランで走って行く予定だったけど、あまりに暑いのと、遅くなると翌日の仕事に差し障りがあるので、鳥首峠から下山、となりました。バス停に着いたらちょうど夕立だったので、この判断は悪くはなかったと思います。
【日 程】 2010年8月15日(日帰り)
【山 域】 関東・秩父
【ルート】 秩父・橋立川伊勢岩ノ沢〜武士平〜大神楽沢東沢〜大持山〜鳥首峠〜名郷
【メンバー】 ゴント(単独)
【行 程】
秩父鉄道浦山口駅 07:50
橋立川林道終点 08:25
橋立川伊勢岩ノ沢出合 09:00
伊勢岩ノ沢遡行
高ワラビ尾根 10:20
武士平・茶平の峠 11:20
大神楽沢東沢出合 11:30
大神楽沢東沢遡行
大持山 14:35
ウノタワ 15:10
鳥首峠 15:35
舗装林道に出る 16:05
名栗バス停 16:30
*登山道、林道は可能な限りランニング
【ルート概要】
橋立川伊勢岩ノ沢出合から同沢右俣、ツメまで
- 橋立林道終点から沢沿いの登山道を行き、最初に出てくる橋の下から本谷を遡行、最初に右から入ってくる沢が伊勢岩ノ沢
- 登山道を歩いて、伊勢岩ノ沢の出合で沢支度しても問題ないですね
- ここから1055mのピークより小持山に近いほうのピーク直下に出る沢を本谷として遡行開始
- 最初に少し大きめの滝も出てきますが、巻けます、釣りをする方はこの滝を見て帰る方が多いかもしれません
- そのうえから始まる小滝などはほぼ直登可
- ガレなど荒れたところも多いですが、沢登り気分を満喫できます
- 滝の規模が小さいのですが、紅いチャートと緑の苔が印象的な色の対比を見せてくれます
- 苔は滑りやすいので慎重に
- 沢沿いにはかつてあったと思われる小径跡が所々に出てきます、また営林署の黄色い看板も目立ちます
- それでも、沢の感じから、上流まで遡行する人は少ないんじゃないかな、と思ったりします
- 今回は水量のいちばん多い沢が本谷だと思って遡行してたんですが、途中の屈曲部の感じから、「右俣だ!」と気付きました。途中の分岐で水量の少ないほうが本谷のようです
- 沢の水はすぐに涸れてしまいます。水汲みできないと、ツメで大汗をかいたときに水の補給ができないので、はやめに汲みましょう
- ツメは長く、少々うんざりします
- しかし最後は落ち葉に埋まった窪状で藪漕ぎがないのは助かります
- 暑くて暑くて大汗をかきながら登っていきます。まだ何があるかわからないので、長袖着たまま、ヘルメットもつけたままです
- ほどなくして稜線。遡行わずか1時間20分 (^_^;
伊勢岩ノ沢のツメから高ワラビ尾根、武士平、大神楽沢東沢出合まで
- (一旦、沢装備解除してトレランスタイルで尾根を降ります)
- 高ワラビ尾根は踏み跡もしっかりあるので間違えることはないと思いますが、武士平・茶平の間の峠近くになって、傾斜が増して、尾根の分岐がわかりづらいところがあり、誤って右の尾根を降りると、茶平に直接、降りてしまいます。降りてしまっても、すぐに登り返して峠に出られると思いますが、急いでるときは下りの分岐では慎重に(自分は少し降りかけて間違いに気付いて戻りました)
- 武士平からはアスファルトの林道になります
- 右手対岸に「め」神社が見えます
- 林道を降りていくと、暗い林の左手の崖の上から、突然、犬が吠えます。その先の林道の屈曲部、車を置けるような草地が、大神楽沢東沢出合です
大神楽沢東沢から大持山まで
- 鬱蒼とした出合で沢支度
- 出合からすぐに沢支度しなくても、しばらくは右岸につけられた小径をたどって沢沿いに進めます。詰まったところで沢支度してもよいでしょう。かなり奥まで入れると思います
- 最初は大きな堰堤が三つぐらいあります。がっかりですね。これは簡単に左から巻けます。水引き用のパイプが沢沿いにずっと引かれているので興ざめしますが、山里の生活もあるわけで(堰堤が必要かどうかは別として)
- 左の山の斜面の杉林は植林だと思われます。仕事用の小径や小屋掛け跡も多数あります
- 沢は若干、荒れています。また沢が狭まったところには蜘蛛の巣がたくさんあって閉口します
- それでも小滝が現れては消え、現れては消え、楽しみが続きます
- 途中、直登したくない直瀑の大滝が三つぐらい出てきますが、すべて右側のガレルンゼなどから巻けます。二つ目の大滝は落ち口へのトラバースが少々いやらしく、若干の高度感を感じます
- 地図上では905mのピーク下の屈曲点のあたりが、小滝連続のハイライトで、ここにはルンゼ状の3段の屈曲ナメ滝(このページの最初の写真)があって楽しいです。すぐに終わってしまいますが、これ目当てに登っても悪くないでしょう
- その上にも小滝はありますが水量が減ってガレっぽくなります
- 早めに水を汲みます。登りで大汗をかくので、ここで水もよく飲んでおきます
- ここから稜線までが長くて疲れます
- 落ち葉で埋まって窪地のようになった沢をひたすら登っていきます
- 1100mあたりから、沢の小さな分岐は右へ、右へと選択します。左の小持山のほうに寄りすぎると、稜線直下は奥壁状の急傾斜のルンゼに阻まれます。稜線から下の沢を見た限りでは、武士平の奥の大神楽沢本流のツメでも同様の急斜面があると思います
- これでもか、というぐらい落ち葉の窪沢が続きますが我慢して登り続けます、汗ダラダラ
- 大持山頂上の50mほど北側にひょっこり飛び出します
- 約3時間の遡行でした。沢登りで源頭までツメ上がった人はあまりいないかもしれません
大持山から鳥首峠、名郷
- 沢装備をザックに収めて、トレランスタイルに。下りなのでかっ飛ばして走っていきます
- 比較的走りやすい尾根です
- 今回は鳥首峠から東へ折れ、名郷に降りました
【装 備】
地下足袋/ワラジ/ハーネス/20mロープ/スリング/8環/ヘルメット/長袖/タイツ/雨具/熊用のザックに付ける鈴
トレランシューズ/Tシャツ/ハイドレーションパック など
*ロープなどは撤退用。沢装備はたとえ重くても、省くわけにはいかず。どういう沢であれ、高巻きで行き詰まったら懸垂下降するしかないわけだし。また、沢のツメで急峻な岩尾根やいやらしい草付に出てしまって、逃げることなどを考えると、やはり装備は削れない。これらの装備を削って沢に入ることはありえない。軽量化するなら、ハーネスをいちばん軽いものにするとか、テープスリングで自作するとか、ロープ径を8mm以下にする?
【感 想】
二日前の山行で山の様子をよく観察して、標高差や山の感じから、奥秩父のような難しい沢登りではないだろう、久しぶりの身体でも、登れるかな、と思ったのだった
沢登りとトレランを繋げてみたらどうだろう? どうせなら沢登りを二回やって、降りるのはトレランでかっとばす。そんな、イイトコ取りのオモシロ山計画で即実行、うまくいった
まず、駅から走ってすぐに取り付ける沢はどこだろう、と思ってハイキング地図を開くと、武甲山の西側に入る橋立川が目に入り、短い流程の沢があった。ネットで調べて、記録の出てないほうの沢を選択! 後は、第二の沢、一昨日に入山したときに見た大神楽沢東沢なら、尾根を越えてすぐに沢に入れる、これに決定。下山については、かつて奥多摩の川苔山から武甲山までは一気にトレランで走ったこともあるし、帰りの道もわかってるので、安心
沢登りのルート図集の類には、大持山や小持山に至る東側の沢の紹介はあるものの、山の西側については出てこない。低山なので生活と仕事の場として山はフル活用されているはずで、人が入っていないということはありえないのだけど、さて、どうせなら、記録が公にされていない沢に行こうと思った
遡行図がなければ、それだけ未知の要素が増えるわけだけど、2万5千分の1の地図をよく見れば、どのあたりに大きな滝が潜んでいるか、その滝は巻けるのか、エスケープルートはとれるか、といったことが、なんとなくわかる。その感覚を信じることにする
それでも慎重に行動することを肝に銘じる。実際に沢に入って、少しでも不安を感じたらその時点で撤退すると決める。滝を降りるのは簡単ではないので、そのことをよく考えなければいけない。また、天候についても同様で、明かに雨になると予想できたら即、沢から離れるつもりだった。上流で降っていれば、現地で降っていなくても鉄砲水がくる。だから今回の計画では、ほんとにスピード命だった。最初、天気はよかったけれど、大神楽沢東沢の上流に入ってから空が曇ってきて早く沢から離れようと思った。鉄砲水が来なくても、落石や土砂崩れだってありうる。山の稜線では雷も鳴り出し、山から下りたら激しい夕立に見舞われた。核心部で大雨になったら小さな沢でも危険
秩父鉄道浦山口駅に降りて、そこから橋立川の林道、走れそうな傾斜の部分は、ともあれ走る。今の脚力だと、この荷物では重いけれど、低速ながら次第に慣れてくる。走ったり歩いたりを繰り返して進んでいく。朝早いのに、川沿いではすでに川遊びをしている子どもがいる
暑い。走っていて熱中症になりそうだ。水分をこまめに補給する必要がある。水については沢だから心配はない
伊勢岩ノ沢出合に着いて、地下足袋にワラジ姿になる。沢支度するのがもどかしい。今回はスピードが要求される。早く着替えるのだ
沢登り自体が1年ぶり? 出合から少し入って大滝が見えると、これ巻けるのかな? と不安になる。しかし、よく見れば問題なかった。
岩にかじり付いて登るといった全身運動は久しぶりで、最初は身体がうまく動かず心配だったものの、後半は感覚を少し取り戻した。岩場ではスタンスに立ち込む時の脚の筋力が弱く、また、ホールドを掴む前腕の筋力も弱かった。
ワラジの後ろの部分がずれると、足下のバランスが崩れて不安定になり、転びやすくなる。今回、ワラジの補強も、ワラジのズレを防ぐ縛りヒモの捻りの作業もしていなかった。これは反省しなければいけない。
地下足袋にワラジは滑らなくていいけど、足裏は若干、痛い。慣れてしまえばどうってことないのだが。トレランシューズに渓流用フェルトを装着できないだろうか、などと思ったりするわけですが、今度は足裏の感覚が鈍ってダメかな?
チャートの沢床に緑の苔が覆う、コントラストが美しい。秋は紅葉でもっと美しいかも?
伊勢岩ノ沢、沢筋は涼しくてよかったけど、上部で水が涸れてガレになってしまうと、暑くて困る。長袖にヘルメット。大汗をかいてしまう。それに熊が怖い。熊鈴は付けているけど、音が遠くまで聞こえるとは思えないので、要所要所で柏手を打つ
稜線に出たらすぐにトレランスタイルへ変身。適当に食糧を口に入れながら走り降りる。汗ダラダラ
大神楽沢東沢出合。まだ体力はあるし、予定したコースタイムで来ているんだけど、さて、ここを何時間で抜けられるか。2時間半ぐらいでないと厳しいのだが……伊勢岩ノ沢よりも手応えがありそうだ
沢に入って、堰堤が続く。もしかして、この後も堰堤が続いて、ゴーロとガレでおしまい、とか? でも途中から小滝が続き、時にハングした大滝が出てきて、沢は高度を上げていく。高巻きの踏跡もだいたいわかる。2万5千分の1の地図から、沢筋の屈曲点がおそらくゴルジュ風になっているぞ、と思った箇所は、確かにそうなっていた。この部分は遡行価値がある。
さらに登っていくと水が切れ切れになる。早めに水を汲んでハイドレーションパックにも貯めておく。ツメが長くてしんどいが、分岐の選択さえミスらなければ、稜線まで最短距離でいちばん安全なはず。変な枝尾根に取り付いて逃げるほうが怖い。傾斜が比較的緩い窪状を登っていく。途中では四つんばいになる箇所もあるけれど、落ち葉で埋まっているので、落ちてケガをするほどのことはない。根気よく登っていき、大持山の稜線に出た。頂上まではすぐ
頂上でトレランスタイルに。残念ながら沢で3時間かかったので時間切れ。最初の予定では、鳥首峠から棒小屋ノ頭に登り、蕨山から金比羅尾根経由で直接、名栗湖へ降りて、さわらびの湯まで走ろうと思っていた。また別の機会に、普通のトレランで山をたくさん越えて、さわらびの湯をゴールに走る計画もおもしろそう
鳥首峠から下山。白岩の採石場にはトロッコが走るような軌道(跡?)があって、不思議な光景だった。その手前には廃墟があって、ちょっと怖い。もう夕方だというのに、傘を杖がわりにした人が登ってきていた。廃墟マニアかな?
アスファルトの林道に降りて、さらに走る。天気があまりよくないし、雨に降られたくない。バス停手前でついにザーッと降り出した。全力でダッシュしてバス停前の民家の軒先に滑り込む。助かった。30分ぐらいザンザン降っていたが、しばらくして止んだ
この時間のバスならば、さわらびの湯経由。温泉で汗を流し、適当に打ち上げして西武線で帰宅
前にも遡行図が出ていない沢を繋いだことがある。1995年に行った「大血川西谷支流遡行〜長沢山稜線〜長沢谷桂谷下降」。釣師を含めて毎年誰かはこの沢を登るに違いないけど、自分なりの新しいルート引くのは楽しい
自分なりの新しいルート。それは未知への態度を再確認することになる。どんなに小さくても、既知の道の組み合わせによる未知の創出はできる。自然に対する畏敬というより、畏怖、恐怖……人間の意志や計画を踏みにじる圧倒的な力を確認しつつ、通ることが可能なルートを探すこと……
この夏の山系イベントは沢登りですね。
涼しそうですが、この夏は秩父で遭難とヘリコプター事故があり、半端では行けない、行ってはいけないという印象も持ちました。
一方で、安全なら一度は試してみたいとも思います。
ところで、最後に1つ。
日付が22日になっています。多忙ゆえ?
日付、間違ってました。修正しました、
ご指摘ありがとうございます。
沢の困難度から言えば、もっとも易しいほうですが、
安全かというと……安全とは言い切れません。