「ドラゴンの卵」を割ってみると、そこには……
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石をカットした時の不思議な模様がたくさん見られますよ。
本をつくる仕事を教えていただいたデザイン師匠さんが作った本で、いただいてしまった。
執筆、撮影、デザインまで、まるごと作っている! これぞ新世紀出版人。
ありがとうございます。
装幀家にして「石のふしぎハンターさん」なのでした(→lithos-graphics)。
んで、石の写真を見ながら思い出すのは……
子どもの頃、山の崖下に行くと丸い石が落ちていることがあった。
その崖は岩ではなくて、シャベルで崩すことができる程度の砂が固まった崖で、十万年前は砂浜だったような場所。
そこから出てくる丸い石もまた、足で思いっきり踏んづけるとグシャっと潰れてしまうような、岩になりかけの砂の塊だった。
その塊をうまく割ると、たいてい、真ん中から貝の化石が出てきた。
古い時代の貝ではなく、なにか数年前まで生きていたような、今風(?)の貝。
色が焦げ茶色になっているので、現在の貝ではないとわかる程度。
子どもの頃、そんな塊を集めては割り、集めては割り、集めては割り……を繰り返していた時があった。
塊が出てくる崖の近くにある民家の庭先に行っては、その塊を掘り出すので、しまいには怒られてしまった。
その家には当時、なぜか近所で流行っていたピアノの稽古で行っていたのだけど、ピアノより女の子よりお菓子より、化石がいいに決まっている。
ピアノを弾く番になって呼ばれるのだけれど、手が泥だらけ、爪の中まで真っ黒だ。
それじゃ先生に怒られるに決まっている。
夏も冬も化石。
冬は手がかじかんでしまって弾けないので、二重に怒られる。
早く来ても後回しにしてもらってずっと割って、水で洗っていたりするのだが、指にはあかぎれもできている。
もういい加減にしなさい、と怒られて、指が暖まるまで、またしても順番を後回しにされてしまうのだった。
その間も、あの崖のあのあたりの塊を取り出したいが、脚立を貸してくれないかな、などと思っているのだった。
もういい加減怒られるのが嫌になって行くのも止めたいのだけど、化石があるという希望だけを胸に、ピアノなんかにゃ似つかわしくない洟垂れ小僧のオイラは毎週、出かけるのだった。といっても、ド田舎だったわけで、庭先には井戸があって、手を洗うのは汲み上げた井戸水でしたね。
あー思い出した、その化石効果で、少しはピアノも弾けるようになって……今はもうまったく無理だけれど。
そう、それで、この「石の卵」という子ども向けの雑誌なんだけど、自分が割り続けていたあの化石の入ったツチクレが、1億年もすると「ドラゴンの卵」になるんじゃなかろうか、ということだった……そのドラゴンの卵に成長するはずだった塊を割ってしまったわけで、済まないことをしたなぁ、と思うのだった(?)。
ドラゴンの卵の生成に重要なのは、ほどよく安定した波打ち際、あるいは干潟のような場所かもしれない。
自分もまた、そういう場所でゴロゴロと骨をさらしていればドラゴンの卵になると思うと、1億年先がとても楽しみな気分にもなるのだが、たぶん、宇宙人の洟垂れ小僧が割ってしまうだろう、宇宙的な因果応報である……。