八ヶ岳大横断トレイルラン(JR中央線茅野駅→御柱街道→美濃戸→御小屋尾根→阿弥陀岳→赤岳→真教寺尾根→美し森→JR小海線清里駅)
→八ヶ岳大横断写真レポート
日程:2006年6月9日夜行日帰り
通過タイム:
JR中央線茅野駅(発04時00分)→御柱街道→美濃戸(着05時40分/発05時50分)→御小屋尾根→阿弥陀岳(着08時43分/発08時50分)→赤岳(着10時00分/発10時20分)→真教寺尾根→美し森(13時30分)→JR小海線清里駅(着13時50分)
八ヶ岳大横断>アクセス、食糧、装備、季節
- アクセス:JR八王子駅、00時40分発「ムーンライト信州」に乗る
この夜行列車がなければ今回のトレイルランは成立しなかった。全席指定なので、本来は乗車不可なのだけど、無理に乗せてもらった。古い列車で、ちらほらと登山者が乗っていて、数十年前の新宿発のアルプス急行みたいだった。
- 食糧:走り出す前にバームゼリー+菓子パン。途中はゼリー2、菓子パン1、飴10個程度。水は全2リットル。運搬は1.5リットル。美濃戸までに500ミリリットル消費。自販機でボトル1本購入。夏で快晴だったら、2リットルでは足りない。ちなみに、御小屋尾根途中には水場があるし、赤岳頂上でも水を買うことができるだろう。
- 装備:できるだけ軽く! でないと、走るどころではない。とはいえ、最低限の装備は必要。激しく悩むところ……
帽子、ランニング用長袖、同タイツ、ラン用靴下、ウルトラ用のランニングシューズ。ポンチョタイプ雨具。ランニング用ザック。ヘッドランプ、地図(マトモナ地図!)、コンパス、高度計付時計。笛、小型ナイフ、若干の医薬品、緊急用食糧。着替え(雨でグシャグシャになった時のことを考えたほうがいい)。できるだけ装備は削ったが、雨が降っている状況では、寒くてとても走れなかったと思う。もし、雨が確実に降ることがわかっているならば、雨具は上下セパレートが必要だし、防寒着(毛糸の薄手のセーター)が必要だと思う。行動できなくなったら、その時点でかなり危険な状況になる、ほんのわずかのミス、小さな事故、転倒、ルートの判断ミス、等、絶対にやってはいけない。無理は禁物。下界ではないのだ。
- 季節について:6月上旬または9月中旬ぐらいが最適か。5月末ではまだ佐久側に残雪がたくさん残っているだろうし、夏はロード部分が暑すぎる。秋が深くなると陽が落ちるのが早くなるし。
八ヶ岳大横断>ルートについて
- 茅野駅 着03時35分/発04時00分
茅野駅に着いた頃には天文薄明が始まっており、04時発頃にはヘッドランプも不要だった。駅の周辺にはコンビニもあるので、食糧も調達できるはず。薄明るくなってきた東へ向かって走り出す。道は明瞭。
- 子之神 通過04時25分
快調に御柱道の坂道を上っていく。畑や水田が広がる手前あたりで、子之神に至る。写真を撮りながら寝神社境内を通過。八ヶ岳の扇状地の湧水の小川のほとりにある、小さな神社だった。付近には縄文遺跡がたくさんある。夜が明けて、空が明るくなる。
- 御柱道・原村1100m地点 05時00分
1時間で300m上昇。広大な田畑の一本道を快調に走行。車の通行もほとんどないので安全。梅雨の間のつかのまの晴れとなり、太陽が八ヶ岳から昇ってくる。背後には南アルプスが光っている。荘厳な眺望だ。この風景を見るだけでも価値がある。走りに来てよかった。
- 美濃戸 着05時40分/発05時50分
八ヶ岳中央農業実践大学校を通り、傾斜が増していく道を、呼吸全開モードで走っていく。心なしか空気薄いぞ……なつかしい美濃戸に到着。1710m。茅野駅より900mの登高。赤岳鉱泉や行者小屋へ行く道の終点のバス停。駐車場もあるので、車でアプローチする人も多いようだ。自分が到着した時も、車で入ってきている人がいた。美濃戸の山荘でトイレ休憩(有料100円)。八ヶ岳美術館で芳野満彦氏の山岳画展の開催を知る。行きたいところだけどなー……今日は無理。
- 御小屋尾根へ
天候が悪かったら行者小屋経由で行こうかと思っていたけど、計画通り、御小屋尾根→阿弥陀岳→赤岳で行くことにする。ここから俄然、急登となる。車道の終わる別荘地の登山口までがんばって走ったが、ヘロヘロになったので走るのは止めて、早歩きに切り替える。2136mの小ピーク地点まではダラダラと登りが続く。尾根通しがよい。左の枝道(巻き道)に入ると、途中で道が消えて、獣道になってしまうし、急傾斜の山腹を強引に這い登ることになる……って、オレのことかよ! まいりました。山は春になったばかりで、緑の新芽が出てきたばかりの様子。少し気温が低いし、登れば登るほど風が出てくる。これで雨でも降っていたら薄手の長袖程度では寒くて途中で引き返したとと思う。今日はなんとか天候ももつだろう、トレーニングなので、気合いを入れて登っていく。脚が攣る寸前まで脚を動かす。赤岳頂上までは容赦せずに登るのが今回のトレーニングの目標なのだった。
- 不動清水 07時39分
御小屋尾根上にある水場。水場まで数分らしいが確認はしなかった。過呼吸気味なので少しフラフラしてきた。2136mの小ピークを過ぎると、少し平坦な尾根道になる。歩いたり走ったりを繰り返すが、呼吸が整わない。体力のある人だったら走り抜けられるかもしれない。次第しだいに阿弥陀岳のピークが近づいてきて、隣の阿弥陀南稜の立場岳も近い。よし、あと少しだ……というのは大間違いである……
- 2300m地点 08時00分頃
ここから500mの急登! これからが核心だ。樹林帯が薄くなり、森林限界が近づいてくるのがわかる。南稜が阿弥陀岳頂稜の岩場と繋がってきて、頂上が近いことを教えてくれるのだけど、ニセピークに騙されてはいけない、高度計を見れば、まだ登りがあるはずだ……登り坂は登れば登るほど急になる。苦しいぜ。。頂上近くなって、下山するパーティとすれ違う。昨日、行者か赤岳頂上小屋に泊まったのだろう。
- 阿弥陀岳 着08時43分/発08時50分
つ、着いた。なつかしい阿弥陀岳頂上。2805m。茅野駅からだいたい5時間ぐらいか。2000mの上昇。眺望最高。山の上はとっても静か。空が曇ってきた、稜線上は若干の風が出ている。気温は10℃ぐらい。汗が冷えて寒い。すぐに雨具を着る。パンを食べる。どうも天候がアヤシイ、雨につかまると急激に消耗しそうで怖いので、さっさと出発する。
- 赤岳・中岳のコル 通過09時33分
雨具を付けたままで通過。寒いのでともかく脚を動かす。呼吸、ゼーハーゼーハー状態。時計を見ると10時近い、10時ピッタシに赤岳に着こうと思った。
- 赤岳 着10時00分/発10時20分
最後はダッシュ気味。10時に頂上だ! 間に合わせろ! 着いた! やったぜ……って……アホだなオレは。酸欠で視界が暗くなっているので腰を下ろす。10分ぐらいして回復、食糧、水分を補給。佐久側は空気が暖かい。ガスが出てきた。人が少ない赤岳頂上は気分いいなー。眠くなってきた。大の字で寝ていたいけど、雨降りそうだし、安全地帯まで早めに下ろうと思い腰を上げる。休みすぎると疲れを感じて動けなくなる。
- 真教寺尾根分岐 通過10時32分
赤岳からの主稜線を南下、10分ほど下ると、左手(南東)に真教寺尾根分岐が現れる。「真教寺尾根10」という、丸くて白い小さな看板が出ている。「てもと.あしもと」という四角い看板もある。目の前には天狗尾根の大天狗のピークが見える。ここからが長い長い下り坂の始まり。佐久側は東向きで太陽が当たり、とても暖かい。雨具を脱ぐ。一気に500mばかり、下降する。この間、鎖場多し。たいしたことないや、と思っていると、思わぬところでスッ転ぶ。森林限界の上なので、転んだら当然、どこにも止まらず、谷に落ちる。春先で雪が消えたばかりの登山道は、浮き石も多い、鎖の支点も緩んでアヤシイかもしれないし、慎重に下ったほうがいい。
- 真教寺尾根牛首山(扇山2356.5m) 通過12時05分
2300mまで降りてくると、長いながい水平の尾根道が続く。疲れが出てきて、脚もとがおぼつかない。走る気力がなくなっている。現在地、ピーク名が確認できないので、とても長く感じられる。途中で足の屈伸をして休みながら走る。登山道はところどころ、わずかに残雪がある。5月末だと残雪が多くて走れないだろう。残雪の上を通過する時にハデに滑って転んでしまった。ランニングのタイツのスネの部分が破れてしまう。あらら。気温がグングン上昇しているはずなのに、寒気がする、かなり疲労の度合いが濃い。
2280mの尾根末端のピークから尾根筋は真東へと折れる。ここから再び坂が急になる、長い、脚が痛くなってくる。1900mの清里スキー場のリフト近くになると傾斜も緩くなり、車の騒音や観光客の声も聞こえてきて、「里」が近いことがわかる。リフトを過ぎると、牧草地のような草原と笹原、樹林帯を降りていく。非常に長く感じられる。樹林下の笹原の道は、あまり人が通らないようで、草刈りをしていない部分があり、足もとは大きな石がゴロゴロしていて、傾斜が緩くても走るに走れない。標識もまばらなので、夜間だと確実に迷うと思う。夜間になってしまった場合は、ルートを左へとって、リフト直下を歩いていったほうがよいのかもしれない(憶測)。いずれにせよ、ヘッドランプと地図とコンパス必携。
- 美し森入口(ピクニックバス・清里高原ホテル入口) 通過13時30分
さらに下っていくと、美し森の丘の道へと繋がる。観光客でごった返している。走りにくい、というか、ちょっと恥ずかしい。とはいえ、できるだけ稜線の木道を行ったほうがよい、駅までの最短ルートなので。バス停まで下ってくると、あとは清里の駅まで、ほぼ直線の下り坂の道路が待っている。
- JR小海線清里駅 着13時50分
美し森入口前の道路からまっすぐに道路を走り降りる。下り坂なので勝手にスピードが上がる。20分、キロ5分切るようなペースで走り降りる。一気に清里駅まで降りられた。
- 清里温泉「天女の湯」→電車で帰る
さすがに銭湯にでも入って汗を流して着替えないと電車に乗れない。清里にあるスーパー銭湯、清里温泉「天女の湯」に行く。場所は、丘の公園・アクアリゾート清里。清里駅から……遠い遠い……1.5kmぐらいあるだろうか、道を下っていったのだけど、20分以上かかったと思う。疲れた足にはこたえる。場所さえ確実にわかっていれば、清里駅を通りこして、一気に温泉まで走ったほうがよかったかもしれない。温泉利用料は750円。21時まではやっている。銭湯から出て駅まで戻り、飯も喰わずに15時37分の電車に乗る。小淵沢駅で、どうしても食べたかった駅そばを食べて、簡単な打ち上げ。急行にも乗らず、普通列車を使って、夕方には自宅に戻れた。
八ヶ岳大横断>今回の収穫・雑記
- 山脈越えのトレイルラン・ルートが拓けた。八ヶ岳だけでなく、南アルプスや奥秩父などで[駅→駅+銭湯]の山越えルートを開拓したい。走行時間は10時間程度がちょうどいいようだ。それ以上に長くなると疲労が激しくなるし、山の場合はあまり無理ができないので。金曜夜に出て、土曜の朝方に走り出し、土曜の15時ぐらいには到着したい。夜には自宅に戻っていられるような、そんなトレイルラン。
- 茅野駅の標高は約800m、八ヶ岳赤岳2899m、高度差2000m超の上昇。
- 八ヶ岳の広大な裾野を走ることができた。登りは美濃戸1710mまでと、御小屋尾根取り付きまではともかく走った。山に入って傾斜が急になってからは走れず。ただ、尾根上の平坦な部分は少し走れる。赤岳からの下降については真教寺尾根を下るあたりは走れず。平坦になったところから走れる。美ノ森あたりからは本格的に走れるようになり、清里まではノンストップのダラダラした裾野の傾斜なのでおもしろいように下れる。
- 茅野駅から美濃戸、御小屋尾根、阿弥陀岳へと西進した道は、「御柱道」といって、諏訪大社下社で使う御柱を引き下ろしてくる道だった。おそらく、縄文時代からこの道は使われていたはずだ……
- 「御柱道」沿いに、「子之神」という土地を見つけた。そこには寝神社があった。子之神=寝神社。自分の住んでいる東京近郊の小川の黒目川上流にも子之神社があり、由来などを調べたことがあった。他にも子之神社を調べたところ、子之神社近くには必ず縄文遺跡があった。明らかに、古層の聖なる場所、縄文の祭祀と関係のある神社だった。八ヶ岳の縄文とも何か関係がありそうな気がした(継続調査中)。ランニングのため詳しくは見ることができなかったが、「八ヶ岳の子之神社」は針葉樹の巨木に囲まれた不思議な場所だった。後で調べたところ、昔は御柱を下ろしてくる時に、ここで宿泊したのだそうだ。だから、寝之神なのだ、と。信州の古い時代の民話で「寝る」と関係のある話しならば、三年寝太郎だ、寝太郎といえば、でいだらぼっち、だ。でいだらぼっち、といえば、八ヶ岳だし、山の神だし……繋がってきた。
- 八ヶ岳美術館で「芳野満彦山岳画展」開催中!(6月29日までだ急げ!) おぉ、我がヒーロー、芳野満彦だ! 彼がいなければ自分は山なんかやらなかったし、山小屋でバイトすることもなかった、岩登りもやらなかったし、まして、本を好きになることもなかっただろう。芳野氏は、新田次郎の山岳小説『栄光の岩壁』の主人公のモデルだった。芳野氏の登山の始まりは、戦後すぐ、八ヶ岳での遭難で両足先を切断したことから始まった、そこから不屈の精神で山に入り込み、日本人で最初にヨーロッパアルプスのマッターホルン北壁を登ってしまった。足先がないのに、だ。こんなスゴイ人が他にいるだろうか? もっと評価されていい人だと思う。ちなみに、彼の山岳画はすばらしいに尽きる。
- 八ヶ岳、それはすべての始まりかもしれない。なぜ八ヶ岳が始まりなのかといえば、縄文の前の時代には富士山よりも八ヶ岳に高い成層火山があったからだ。古阿弥陀岳といって、赤岳と現阿弥陀岳の南側に、標高3300mほどのドデカイ山があった。それが爆裂噴火して、吹き飛んでしまって、今は跡形もない。山体崩壊した山塊は南方はるか韮崎まで流れていったのだ。サッカーの中田を生んだ韮崎周辺は、八ヶ岳大崩壊の山体崩壊の押し出し部分なのである……
- まだまだあるのだが……追記予定……
Posted by gont at 2006年06月19日 14:08
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